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漫画イラスト制作のペン入れ・線画描き方のコツ(デジタル・アナログ)

マンガはプロットから始まり、ネーム、下描き、ペン入れ、ベタ・トーン貼りなどの仕上げと、作業工程が多いです。その中で今回は意外と軽く思われがちな傾向がある『ペン入れの重要性』についてみていきたいと思います。

 

 

マンガの下描きが終わって、いざペン入れへ…となると、シンプルに『下描きをなぞればいい』と思われがちなのですが、それは全くの間違いです!
ペン線一本の表現でマンガのクオリティが全く違ってきます。今回はその違いを見ていきたいと思います。

 

1.簡単な図形で線の強弱を見ていこう

まずは簡単な図形でペン線の重要さを見ていこうと思います。

 

 

3つの円をご用意しました。
同じサイズの円なのですが、全部印象が違いませんか?

受ける印象は人それぞれではあるのですが、Aは華奢、弱そうな印象、Bはしっかり、はっきりした強い印象、Cはペンの強弱(線の太さに太い細いの差をつけること)がついて立体的な印象をうけませんか?
また、ABは平面的な円に、Cは立体的な丸にみえませんか?

不思議ですが、同じ円でも線の引き方でこんなに違いがでます。
マンガはほぼ全てを線で表現していくので、上記で上げた印象がそのまま反映されていきます。
ペン線がいかに重要かということをお判りいただけたでしょうか?

 

今度は実際のマンガイラストで比較してみましょう。

 

2.キャラクターのペン線について

まずはキャラクターのペン線についてみていこうと思います。

 

 

いかがでしょうか?
キャラクターでみても、円と同じAは華奢、弱そうな印象、Bはしっかり、はっきりした強い印象、Cはペンの強弱がついて立体的な印象を受けませんか?

Cは線の強弱をつけてはいるのですが、適当に強弱をつけただけなので、さらに強弱をつける部分を考えて入れたペン線もご用意してみました。

 

 

Dはキャラクターの体の厚みを考えて影になるところなどを太くし、遠近感の強弱も加えてみました。
ADは全部同じペン線です。違うのはペン線の強弱の違いだけです。
もちろん絵柄や、好みなどで分かれると思いますが、基本は主線が細くても太くても、強弱をつけて立体的に見せていきます。

 

3.背景のペン線について

こちらでは背景のペン線についてみていこうと思います。

 

いかがでしょうか?
ちょっと線が多くて見にくいかもしれませんが…
背景も、円やキャラクターと同じAは華奢、弱そうな印象、Bはしっかり、はっきりした強い印象、Cはペンの強弱がついて立体的な印象を受けませんか?

 

 

さらにこちらもキャラクターと同じように背景の厚みを考え、背景の影になるところや、遠近で強弱をつけた背景Dをご用意しました。
こちらもキャラクターと同じように全部同じペン線ですが、強弱の入れ方次第で受ける印象が全く違うことがお分かりいただけたでしょうか。

 

4.背景とキャラクターのペン線について

キャラクターと背景が同時に同じ画面に描かれている場合はどうでしょうか。
今回は背景とキャラクターが同じ画面にいる場合についてみていきましょう。
最初にキャラクターのCと、背景のCを組み合わせてみました。

 

 

いかがでしょうか?
背景のペン線が主張して、キャラクターが背景に埋もれてしまっていませんか?
背景とキャラクターが同じ線の太さだと背景に埋もれてしまいます。
キャラクターと背景が同時に存在する画面では、背景にキャラクターが埋もれてしまわないように少し配慮が必要です。
まずは背景とキャラクターのペン線の太さを変えてみましょう!
この場合キャラクターを目立たせたいので、キャラクターのペン線は太めに、背景のペン線は細めにします。するとこんな感じになります。

 

 

キャラクターのDと、背景のDを組み合わせてみました。
いかがでしょう?これだけでもすっきりしましたね。
キャラクターのペン線が太くなったことにより、キャラクターが手前に出てきたように表現され、さらに目立つようになりました。
背景はキャラクターよりペン線を細くしたため、控えめになり、悪目立ちすることがなくなりました。 

このままでも充分ではありますが、マンガの場合はさらにキャラクターを目立たせたい場合があります。その場合は、さらにひと工夫が必要です。

 

 

よく見ていただかないとこの画像では分かりにくいかもしれませんが…キャラクターの周りを数ミリ白く抜いたり(白抜きといいます)、キャラクターの周りの線をぼかして、背景をさらに目立たなくしてみました。

これらの表現方法はマンガのシーンに合わせた表現が必要になってくるので、シーンそれぞれで違います。それぞれのシーンに合った表現方法でメリハリをつけてくださいね。

 

5.ペン線上達方法

最後にペン線の上達方法について触れたいと思います。

思い通りにペン線が引けるようになりたいけどどうしたらいいのか分からない…と悩まれる方は多いと思います。ペン線の上達方法は大きく二通りに分かれます。

ペンに慣れるための基本的な練習と、ペン線を立体的に表現する練習です。

 

■【基本的な練習】アナログでのペン線練習

アナログの場合「ペン先」と「つけペン」、「インク」を使用して描きます。

「つけペン」には、Gペンや丸ペン、かぶらペンやスクールペンなど様々な種類があります。まずは試し描きなどをして、ご自身に合ったペン先を選んでください。

また「ミリペン(ミリ単位の線が引ける、製図などにも使用されるサインペン)」を使用して、線の強弱を追加したり、背景線を引いたりすることも可能です。ジャンルによってはつけペンを使用せず、ミリペンで描かれる方もおられるようです。

アナログの場合の注意点としてペン入れ後の消しゴムでペン線が薄くなってしまった…ということがあります。

その場合は「ミリペン」や「インク」が原因のことが多いので、新しい画材を使用される場合は、お試しで一度他の紙で描いて、ペン線を消しゴムで消して支障ないかどうかを確認してから本格的に使用されることをお勧めいたします。

これらの道具で描いていきますが…マンガの画材であるつけペンやインクは慣れが必要です。最初からうまくペン線が引けることはまずありません。

鉛筆やシャーペンなどは子供のころから長年使っているので、使えて当たり前のようになっていますよね。それと同じで、つけペンやインクもシャーペンなどと同じように高頻度で使用し、道具に慣れていかないと思い通りの線を引くことは難しいです。
初めて線を引く場合は、まっすぐ線を引こうとしてもガタガタとブレた不安定な線からはじまり、やがて安定したストレートな線が描けるようになります。

 

■【基本的な練習】デジタルでのペン線練習

パソコンとペンタブレット(板タブレットや液晶タブレット)を使用して描いていきます。板タブレットや液晶タブレットの筆圧感知レベルの性能や設定により筆圧のかかり具合に違いがありますのでご注意ください。
マンガを描くソフト(アプリ)でおすすめはクリップスタジオペイント(クリスタ)ですが、他にもアイビスペイントやメディバンペイントなど漫画やイラストを描けるソフトは多数あります。ご自身に合ったソフトをお選びください。

 

ペン線に関してはデジタルでも同様です。デジタルだから慣れは関係ない…と思われることもあると思いますが、実は慣れは関係があります。もちろんデジタル操作に慣れる…ということもあるとは思いますが、長く描いているとデジタルでもどんどん慣れていき、ペン線が思い通りにひけるようになっていきます。

特にアナログで慣れておられた方がデジタルに移行された時は、液晶タブレットの画面のガラス板のツルツルした質感に翻弄されることもあると思います。最初は手ブレ補正機能などを使用し、慣れてくれば徐々に補正機能の数値を下げていき、そのうち補正機能をそれほど効かせなくても、滑らかな思い通りの線が描けるようになっていくと思います。
アナログにしても、デジタルにしてもどちらにせよ思い通りの線が引けるようになるにはかなりの時間を要します。根気よく練習を続けてください。

 

■【立体的に表現する練習】ペン線模写練習

こちらはアナログ、デジタル共通で練習可能な模写の練習です。

ペン線に強弱をつければいいと言われても、どこを太くしたり細くしたらいいのかわからない…という方もたくさんおられるのではないかと思います。
最初はみんなそんな感じなので安心してください。
どこを太くしたり細くしたらいいのかわからない…というときの練習方法として、ペン線模写をする方法がおすすめです。

模写と聞くと、一般的には絵をまねて描く、絵の練習というイメージが先行されるかもしれませんが、それとは少し違い、ペン線自体をまねて描きます。
ご自身が好きな作家さんのイラストやマンガをトレース(アナログであれば、トレース台を使用して、下から光を当てて、原稿を透かして線をなぞります)しながら、ペン線の柔らかさや固さ、強弱のつけ方、どこにつけるのか…などもまねていきます。
作家さんそれぞれ強弱のつけ方があるので、こういうペン線を引けるようになりたい!と思う作家さんを選んでくださいね。

一本の線で強弱がつけにくい場合は、まず細めに引いてから太くしたい部分だけをなぞって太くする方法もあります。
その際は線を追加したことが分からないように丁寧になぞってくださいね。
一本で強弱をつける方法でも、あとから太い部分を追加する方法でもどちらでも良いので、ご自身がやってみて一番やりやすい方法で描いてください。

 

ぜひ上手な人をまねて、技を身に着け、さらに自分の絵にマッチするようにカスタマイズをして自分の物にしていってください。
もちろんこちらで挙げた練習方法はあくまで一例ですので、ご自身ならではの方法を編み出して、頑張ってくださいね! 

徐々に慣れていきますのであきらめずに根気よく、ペン線をひく練習を続けてください。
ある日ふと昔描いたマンガを見たときに、自分の成長に驚くと思います。
その瞬間を夢見て引き続き頑張ってください!!

 

 

マンガコース講師 / 正木久美子

 

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