コミックイラストレーターになる方法と仕事内容を詳しく解説
■はじめにイラストスキルを生かせるお仕事
生徒さんの中でも、イラストを描けるようになりたいから勉強されている方、業余(副業)としてイラストを描いている方、仕事にしたい方、色々いらっしゃいます。仕事といっても、イラストを描く業界に就職したい方、副業として活かしたい方、これも様々です。
イラストを描く仕事としては書籍等広告などの紙媒体や商品パッケージのイラストをクライアントの要望に応じて描く「イラストレーター」という職業があります。イラストレーターは制作会社や一般企業のインハウスデザイナーとして活動するケース、フリーランスとしてデザイン制作専門の作業に従事するケースなど、これも様々な形態があります。
また、昨今ではアニメやゲーム・漫画などがWEBやSNSで見ることができるようになったこともあり、イラストに関する仕事は大変な広がりをみせています。
動画制作に使用するキャラクターを制作するイラストレーターや、アニメのキャラクターを描く「コミックイラストレーター(絵師)」などの需要は多いですがその職を目指す人も多くなっています。
今回は特に最近人気のある「コミックイラスト」の仕事を請けたい方や、「絵師」として活動したい方に向けて、手懸かりになる事や仕事内容について解説していきたいと思います。
ちなみに私が初めてイラストの仕事を個人で請け負ったきっかけは、小さなイラストコンテストに応募をして入賞した事だったと思います。
「イラコンの絵を見た」というメッセージがあったわけではありませんが、その時期からお仕事のお声掛けのメールを頂くようになりました。
コミックイラストレーター(絵師)の仕事内容はどのようなものなのか、また、コミックイラストレーターになるための方法について詳しく解説させていただきます。
1.イラストスキルを生かせるお仕事
たくさんのキャラクターが登場するスマホゲームなどでは、多数のコミックイラストレーターが参加しています。SNSで人気のコミックイラストレーターを起用しているケースや、ゲーム会社の社員が制作している場合もあります。
ゲーム会社では2Dのキャラクターデザインをしたり、背景作画を担当したり、面白いところではゲーム内イベントやカードに使用するキャラクターの衣装だけをデザインする部署などもあります。
出版物では小説の挿絵なども挙げられます。ライトノベルのほか、ジュニア向けの文庫レーベルでも可愛いコミックイラストが見られます。
歴史上の人物事典、ファンタジー生物の事典など図案が多数掲載される書籍でもコミックイラストレーターがよく起用されています。
YouTubeで自身のチャンネルを作りイラストメイキング動画をアップして広告収入を得るという手段もあります。
これにはイラストのHOWTOを公開した解説動画もあれば、Vlogのようにのんびりと制作過程を公開しているものもあります。
昨今はコミッション文化も盛んであり、VTuberのモデルやSNSのアイコン、ゲームの立ち絵などの他、ディスクのジャケットイラスト、YouTubeのサムネイルの制作発注も個人間でやり取りが気軽に出来るようになっています。
2.コミックイラストレーターとしてのポートフォリオを作成しましょう
まず、クライアントに「自分は何が描けるか」を提示するためのポートフォリオを作成しましょう。ご自身の持つ可能性を示せるように色々なモチーフや作風の作品を載せると、ご依頼を請けられる幅が広がります。
コミックイラストだと可愛い女の子キャラの需要が大きいかと思いますが、描き手も溢れているため男性キャラや動物、クリーチャー、メカ、背景など色々なものを描けると良いでしょう。
あとは「仕事で使いやすい画風かどうか」という事がとても大切ですので、その都度トレンドを取り入れる柔軟な対応力があるとお仕事を続けやすくなるかと思います。
イラスト一枚ごとに「制作日」「制作に掛かった時間」「制作に使用した画材」の記述を載せて、クライアント側にこちらのスキルが伝わるようにしましょう。
ポートフォリオはクライアントに送付する為にPDFに纏めると良いですが、アートスクールではTwitter、pixivなどSNSに作品を載せてポートフォリオ替わりにしている、また、HP作成ツールを使いポートフォリオサイトを作っている講師もおられます。
趣味を兼ねたSNSをポートフォリオに使う場合、ファンアートだけでなく、オリジナルイラストなども載せてキャラデザイン能力を示すと良いです。
3.コミックイラストレーターのお仕事のおおまかなやりとり
お仕事のご依頼を受けることが出来た場合のやりとりの一例です。
クライアントからお仕事(案件)の詳細や制作スケジュール、稿料などの打診を受けられたら、内容をよく読み必要があれば交渉を行いましょう。
お互いが納得できれば指示書や発注書を頂き制作開始です。
まずは指示書を元にラフ(初稿)の提出をします。クライアントがどのような作品を求めて発注されたのか、しっかり考えて不明な点があればきちんと確認の連絡をしましょう。
イメージを膨らませるための資料探しもとても大切です。
ラフ(初稿)を提出するとクライアントからのフィードバックがあるので、修正が
必要な場合は対応し、完成イメージの方向を固めていきましょう。
このやり取りの回数は、請け負った案件によりけりです。
作品が完成したら、納品となります。クライアントの最終チェックでOKを頂けるとFIXとなりお仕事完了です!
4.イラストレーターの企業案件
企業案件でしたら、お仕事としてしっかりした報酬を頂けるケースや、クライアントからフィードバックなどご指導を受けられる場合もあります。
レイヤー構成など細かなデータ仕様の指定をされるケースや、今まで描いたことのないモチーフを依頼される事もありますが、チャレンジが出来る分スキルアップに繋がります。
企業によってはイラストレーターの管理は後述の仲介業者にお任せしているところもあれば、自身で直接抱えるところもあります。
5.コミッション(イラスト制作を個人へ有償依頼する)
今はコミッションが活発に行われており、気軽に個人から有償依頼を請ける事ができます。
コミイラの生徒さんの中でも、「初めて有償依頼を頂きました!」とお話してくださった方もいらっしゃいます。
コミッションでしたら、普段描いている作風で仕事ができますし、制作スケジュールもご自身で設定しやすいかと思います。
6.コミックイラストレーター(絵師)のお仕事の取り方
⑴企業案件の場合
・イラスト制作仲介会社に登録
登録すると企業案件のイラスト作成の他、線画やキャラデザ、彩色などの分業の受注ができます。案件によっては実績としてSNSなどで公開してはいけないものもあります。実践経験を得たい人向けであり、審査が必要な会社もあります。
・SNSからスカウトされる
TwitterなどSNSの活用も昨今では重要視されています。フォロワーを獲得して知名度を上げ、自身のイラストのファンを増やすと、企業側から見ても需要が分かりやすいためお仕事の依頼を頂きやすくなります。
・イラストコンテストに出す
入賞すれば、そのまま仕事に繋がる場合もあります。
たとえ入賞しなくても応募作品一覧には掲載されるので、人の目に留まる可能性が高いです。
⑵アナログ制作の場合
デジタル制作が主流になりつつありますが、アナログ制作の制作案件もあります。
水彩やアクリル、マーカー等、アナログ画材で描いた原画を販売する事になりますが、売る場所や販売サイトも多数あります。
個展や企画展、展示会などに参加する他、同人誌即売会やハンドメイド系のイベントで原画を販売する方法などがあります。
また、ネット環境さえあれば、通販・販売サービスなどを使い原画の売り買いが可能です。
・展示会やイベントで頒布する
大きなイベントではコミケやコミティア、デザインフェスタなどがあります。参加スペースを申し込み、商品をどう魅力的にディスプレイするか考えたり、お客様と直接頒布のやり取りをしたりと、自分でお店を開くような楽しさがあります。
・ネットで販売する
ネットで原画販売する場合はイベント会場に出展しなくて良いので敷居が低く、気軽にはじめやすいのが利点です。
原画販売が行われている場所としてはネットショップサービスやフリマアプリ、オークションサイトなどがあります。
・BOOTH
『pixiv』と連携したネットショップサービスだけあってコミックイラストが多いですが、絵画やアート系、可愛い動物のイラストなど様々な作品が並んでいます。
・minne
・Creema
上記2つは主にハンドメイド作品を扱う通販・販売サービスですが、手描きイラストも出品されています。挿絵風の優しくシンプルな絵柄や、動物のイラスト、アート系の作風が多いようです。
・ヤフオク
手描きイラストのやり取りの場所としては一番の老舗ではないでしょうか。
出品されている作品は男性向けのコミックイラストが多くを占めています。
★ネットで販売する場合のポイント
ネットで販売する場合は、検索に掛かりやすいキーワードやタグを付けるのが重要です。登録するカテゴリー選択にも注意して、手に取って貰えるユーザーの目に留まりやすくなるように工夫しましょう。
⑶コミッション
コミッションはもともと海外発祥の文化で、お金を支払いイラストを描いてもらう個人間の『有償リクエスト』のようなものです。
有名なものでは以下のサービスがあります。
・Skeb(スケブ)
注文販売というよりユーザーの有料リクエストにクリエイターが答える、投げ銭に絵でお返しをするようなイメージです。クリエイター側に有利な規約やシステムが作られているので、受注の経験がなくても開設しやすいのもポイント。
・SKIMA(スキマ)
オーダーメイドも完成品の販売も容易。完成しているオリジナルキャラクターを販売する「キャラ販売」があるので、自由にデザインしたキャラクターを自分で価格設定して販売できるのも面白いです。
・タノムノ
クリエイターを含むすべてのユーザーが手数料無料でサービスを利用できます。自分の SNSやサイトやの URL も掲載可能です。
イラスト系の受注に特化していますので、目的がはっきりしており見やすいサイトになっています。
⑷クラウドソーシング、スキルシェアサービス
仕事を依頼したいクライアントと、仕事をしたいクリエイターを繋げるサービスです。ウェブサイト上で手軽に仕事を発注・受注をすることができます。
・coconala(ココナラ)
多種多様なスキルが売買されており、コミック系のイラストのやりとりも盛んに行われています。匿名でのやり取りも可能です。
・lancers(ランサーズ)
日本最大級のクラウドソーシングサイトです。クライアントが登録したクリエイター募集の案件に自身を売り込む事ができます。
また、ポートフォリオを登録しておくと企業の方からお声掛けがくる場合もあります。
・Skillots(スキロッツ)
ひとつイラストの仕事といっても、キャラクター、萌え、ゲームイラスト、CD・DVDジャケット等、たくさん登録カテゴリが見やすく分けられています。
⑸イラストを使用した様々な売り方
イラスト制作の受注や販売とは異なりますが、自作イラストを使用したグッズの販売なども面白いです。
自作イラストをプリントしたTシャツやトートバッグを一つから発注出来るなどあ、今は手軽にグッズ制作ができます。
⑹グッズ制作・販売サイトでは以下のサービスが有名です
・SUZURI
・pixivFACTORY
・Booth
話が脱線しますが、自分で着る用にうちのワンコの絵をデザインしたTシャツを「UTme!」で一枚発注した事があります…。
もしこの服がくたびれても、デザイン元のイラストさえあれば再度発注できるのでずっとこの柄の服を着ることが出来るのだなあと少し感動いたしました。
7.コミックイラストレーターになるための方法
コミックイラストは背景や物だけでなく人物を描くなどが多いため、基礎デッサン力は大事です。最近では「コミックイラストレーター」という学科がある大学や専門学校も増えてきています。
また、社会人で通う時間がない・近くに通える教室がないという方であれば通信講座やオンライン講座などを検討してみるのもよいでしょう。
学校や通信・オンライン講座等でプロに習うと、イラストについての基礎だけでなく、芸術・美術など総合的な幅広い知識を習得することができ、知らない部分や苦手な分野についても丁寧に説明を求めることができます。
独学でスキルを高める方もいらっしゃいますが、通信講座等でプロに指導してもらうことも良い経験になると思います。
■おわりに
以上、イラストをお仕事にする事に関して書かせて頂きました。
現状のトレンドのものしか描けないと流行が終わった時に使いづらくなりますし、反対に作家性が強すぎるのも作品の使いどころが狭まってしまうでしょう。
作家性が強い作品というのは個人的には大好きなのですが、それは同時に他人からの評価が割れる、大衆に受け入れられず広く流通しない可能性があるという事です。
イラストの仕事というのは、クライアントの注文に答えた「商品」を制作するのが必須条件であり、そういう意味でエンターテインメント的です。
作家性とエンターテインメント性のバランスをどう取るかというのは、イラストに限らず多くのクリエイティブ職の方が考慮しているのではないでしょうか。
もちろん作家性とエンターテインメント性の二つが合致しており制作に取り組める方や、ご自身の個性を磨いてコアな客層を獲得する方もいらっしゃいます。
自身の個性を生かせる分野に活動場所を絞るというのもひとつの手でありますが、2つの性質の垣根を低くする為には、色んなジャンルのものを好きになること、また、描けるものの引き出しを増やせると良いと思います。「何を描いてもやりがいを感じる」状態に持っていく、という事でしょうか。
その為にも様々な対象に興味をもって向き合う事、チャレンジ精神を持ってイラストの制作に取り組む事が大切だと思います。
コミックイラストコース講師 / セオ